二人の関係を語る上で欠かせないのが、背負っていた看板の重みと、そこに安住しない破天荒な表現欲求です。太地喜和子さんは1943年生まれ。文学座の杉村春子に才能を見出され、映画『男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け』(1976年)のマドンナ・芸者ぼたん役で見せた情感あふれる演技など、日本を代表する名女優として不動の地位を築いていました。
一方、1950年生まれの志村けんさんは、『8時だョ!全員集合』で国民的スターとなった後、1980年代後半から『志村けんのだいじょうぶだぁ』『志村けんのバカ殿様』をスタートさせ、単独の喜劇人としての完成期を迎えていました。格式高い新劇の第一人者と、お茶の間の下世話な笑いもいとわないコメディアン。一見すると水と油に見える二人が共鳴した最大の理由は、お互いが「相手の芸の凄み」を誰よりも見抜いていた点にあります。
コント番組のゲストとして太地さんが迎えられた際、彼女は決して「女優の余技」としてコントを演じませんでした。志村さんの間(ま)を完璧に読み、顔をゆがめて全力で笑いを取りにいく。その本気度に対し、志村さんは深い畏敬の念を抱いたと伝えられています。
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