本作のサウンドトラックを語る上で欠かせないのが、女優・表現者である三浦透子の存在です。約1年にわたる厳しいオーディションを経て選ばれた彼女の声は、野田洋次郎の言葉に別の角度から命を吹き込みました。
三浦が歌唱した『グランドエスケープ』は、積乱雲を突き抜けて急降下する圧倒的な飛翔感をダイナミックに演出します。天候の支配から脱出しようとする青年の衝動を描いた動のアンセムです。これに対して『愛にできることはまだあるかい』は、地上に降り立ち、降りしきる雨を受け止めながら歩む静の祈りとして機能しています。
劇伴音楽全体がこの2曲のコントラストを軸に計算し尽くされていました。だからこそ、映画のエンディングで野田の低く呟くような声が聴こえてきたとき、観客は物語の重みを受け止め、日常へと帰還することができたのです。
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