「シャボン玉」の歌詞が悲しいと感じられる最大の理由は、2番に登場する「シャボン玉消えた / 飛ばずに消えた / 生まれてすぐにこわれた」という、極端に写実的かつ断絶的な情景描写にあります。シャボン玉の儚さを歌うにしては、選ばれた語彙が余りにも残酷なリアリティを帯びています。
雨情は私生活において、幾度となく愛児の夭折(ようせつ)に直面しました。1908年(明治41年)、雨情が26歳の時、妻ヒロとの間に生まれた長女みどりは、産声をあげてからわずか7日後に息を引き取りました。当時の医学では防ぎようのない急逝であり、名も定まらぬまま逝った我が子の小さすぎる亡骸を抱いた経験は、詩人の心に消えない傷痕を残します。さらに後年、後妻つるとの間にもうけた次女・恒子もまた、わずか2歳で病に倒れました。
屋根まで届くことなくパチンと弾けて消えてしまったシャボン玉は、陽光に輝きながら空へ上っていくはずだった幼子の生命そのもののメタファーです。単なる自然現象のスケッチではなく、誕生の直後に消え入った我が子の姿を重ね合わせずにはいられなかった父親の慟哭が、この数行に凝縮されています。
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