『スローモーション』のレコーディングは、日本の新人アイドルとしては極めて異例なことに、アメリカ・ロサンゼルスのスタジオで行われました。まだ海外渡航に不慣れだった16歳の明菜にとって、言葉も通じない本場のエンジニアやミュージシャンに囲まれた環境は大きな重圧でした。
スタジオでの彼女は、譜面通りに歌うだけでなく、息継ぎ(ブレス)のタイミングや語尾の減衰音にまで徹底的にこだわりました。来生たかお特有の哀愁を帯びたマイナーコード進行に対して、決して声を張り上げず、囁くように丁寧に言葉を紡ぐボーカルスタイルを自ら模索していったのです。
このレコーディング秘話において関係者が共通して語るのは、彼女の並外れたプロ意識です。テイクを重ねるごとに表現の深みが増し、現地のアメリカ人エンジニアが「16歳とは思えない表現力だ」と舌を巻いたというエピソードは、彼女が最初から孤高のボーカリストであったことを物語っています。
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