保毛尾田保毛男は、1989年にフジテレビ系列『とんねるずのみなさんのおかげです』内のコントで誕生しました。お笑いコンビ・とんねるずの石橋貴明が演じたこの人物は、濃い青ひげを顔面全体に強調し、頬を鮮やかなピンクに染め、独特の内股歩きと甲高い声で男性に好意を寄せるというキャラクターでした。
この造形が孕んでいた問題は、特定の性的指向を持つ人々を「奇怪で清潔感を欠き、社会通念から逸脱したピエロ」として一元的に固定化したことです。当時、メディア上に可視化される性的マイノリティの姿は極めて限定的でした。情報へのアクセスが乏しかった時代、数百万の視聴者、とりわけ子どもたちにとって、画面の中の保毛尾田保毛男こそが「ゲイ」の唯一の参照枠となってしまったのです。
バラエティ番組の圧倒的な影響力により、「ゲイ=嘲笑しても構わない対象」という合意が社会全体に無批判に浸透していきました。石橋貴明の卓越した演技術がキャラクターの強度を高めれば高めるほど、現実世界を生きる当事者たちのアイデンティティは娯楽の犠牲として削り取られていきました。
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