西日本新聞の取材班および気象・光学の専門家チームが写真の撮影角、方位角、標高データを照合した結果、驚くべき事実が判明しました。画像に映っていた稜線の形状や山頂の配置は、対馬南部から中部にかけての山岳地形および壱岐の稜線データとほぼ完全に一致していたのです。
本来なら地球の曲率によって水平線の下に沈んでいるはずの対馬の山々がなぜ見えたのか。その答えは、光が空気密度の変化によって曲がる大気屈折(たいきくっせつ)の異常増大にありました。
光は均一な大気中を直進しますが、温度や気圧によって空気の密度が異なると、密度の高い方向へと進路を曲げる性質を持っています。撮影された8月13日の玄界灘上空では、日中に熱せられた上空の暖気と、海水によって冷却された海面直上の冷気が接する特殊な「接地逆転層」が発生していました。
海面付近の空気が冷たく重く、上空へ行くほど暖かく軽くなる状態が形成されると、遠方の島から発せられた光は地球の曲率に沿うように下方へ曲げられます。この結果、観察者の網膜やカメラのセンサーには、光が水平線の下から回り込んできたのではなく、「水平線の上空から直進してきた」ように投影されます。これこそが、幾何学的な死角を打ち消して遠景を上方へ持ち上げる「浮き上がり(異常屈折・上位蜃気楼の初期段階)」と呼ばれる物理現象です。
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