北の国境がロシアと張り詰めた緊張を保つ一方で、日本の南西端にも劇的な距離感を持つ国境が存在します。日本最西端の島である沖縄県・与那国島から台湾東海岸までの距離は、わずか約111kmです。
与那国島の西崎(いりざき)にある展望台からは、年に数回、大気が澄み渡った早朝や夕刻に、台湾中央山脈の険しい稜線が水平線の彼方に巨大な黒い影として浮かび上がります。与那国島から沖縄本島の那覇までは約510km離れているため、県庁所在地よりも隣接する台湾のほうが圧倒的に近いという地理的逆転現象が起きています。
この海域では、地元住民の間でかつて台湾・花蓮との間で活発な密貿易や自由な船の往来が行われていた歴史があり、文化的な紐帯も色濃く残っています。しかし近年では、台湾海峡をめぐる安全保障情勢の変化に伴い、与那国島への陸上自衛隊沿岸監視隊の配備など、国境の島としての防衛インフラ強化が急速に進められています。北の納沙布岬と同様、南西諸島もまた、国家の防衛線としての重責を直接背負う現場となっています。
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