料理研究家の草分けである祖母・村上昭子さんから母・杵島直美さん、そして現代のライフスタイルに寄り添う提案を続けるきじま祥太さんへと継承されてきたレシピの真髄は、「手をかけるべき急所を見極め、無駄な工程を削ぎ落とす」という合理的な家庭料理哲学にあります。きじま家直伝の調理法は、決して特別な高級割烹の技術を要求するものではありません。旬の素材が持つ水分量、繊維の硬さ、加熱による香りの揮発特性を的確に捉えた手順の積み重ねです。
春の旬食材であるたけのこと新わかめは、古くから「春の出会いもの」として珍重されてきました。山で芽吹くたけのこの大地を思わせる風味と、海で育つわかめのミネラル感が互いを補い合い、ひとつの小鍋の中で調和します。濃い醤油や砂糖で甘辛く炊く関東風の煮物とは一線を画し、塩分濃度を抑えたあっさり煮物として仕立てることで、春の清涼感をそのまま喉越しに届けることができます。
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