「タレ抜き」という一見風変わりな裏技が提示したのは、天丼という料理における食感のプライオリティだった。揚げたての乾いた音を愛でるのか、タレが馴染んでご飯と溶け合う一体感を慈しむのか。その答えは食べる側のその日の気分に委ねられている。
自宅のキッチンで手鍋を揺らし、醤油とみりんが泡立つ甘い湯気を吸い込む時間。弱火でゆっくりと濃度を増していく琥珀色の液体は、市販のボトルの手軽さとは一線を画す深い満足感をもたらす。比率を覚え、煮詰めのタイミングを体得すれば、いつものスーパーの惣菜天ぷらであっても名店の佇まいへと生まれ変わる。基本の黄金比を手中に収めた今、あとは自分にとって最も心地よい「ひと垂らし」の塩梅を見つけ出すだけだ。
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