大正時代、土佐。貧しい家庭から鬼政のもとへと連れてこられた少女・松恵は、過酷な環境の中で家事や子守りに追われます。やがて鬼政の愛人・つるが女児を出産。「花子」と名付けられたその赤子は、鬼政にとって目に入れても痛くない宝物となります。松恵は花子の守り役を命じられ、わがまま放題に育つ花子の理不尽な要求に耐え忍ぶ日々を送ります。
鬼政の勢力は拡大の一途をたどりますが、近代化の波と警察の取り締まり、さらにライバル組織との抗争が一家の屋台骨を徐々に軋ませていきます。正妻・歌の急死、つるの発狂と衰弱、そして鬼政自身の逮捕。一家の庇護を失った花子は、不良少年や放蕩者と関係を持ち、奔放な性格のまま自暴自棄な坂道を転がり落ちていきました。
服役を終えて出所した鬼政を待っていたのは、かつての栄光が失われ、凋落しきった一家の残骸でした。抗争の激化によって鬼政は命を落とし、かつて土佐を牛耳った鬼龍院家は完全に壊滅します。そして物語のラスト、大人になった松恵のもとに、花子が若くして病に倒れ、孤独のうちに息を引き取ったという報せが届きます。松恵は花子の遺体を引き取り、静かに弔いながら、時代と男たちの狂気に翻弄されたひとつの家の終わりを見届けるのでした。
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