旧朝倉家住宅は、東京府議会議長や渋谷町議会議長を歴任した政治家・実業家の朝倉虎治郎氏によって、大正8年(1919年)に建てられました。関東大震災(1923年)以前に東京に建てられた大規模な和風木造住宅が、ほぼ当時の完全な姿のまま残されている例は極めて稀です。第二次世界大戦の空襲も免れ、戦後は中央公衆衛生院、大蔵省渋谷会議所などの国有施設として活用された後、渋谷区へと移管されました。
主屋はほぼ全棟が木造2階建てで構成され、板張りの廊下、伝統的な数寄屋造りの意匠、精巧な欄間彫刻など、洗練された大正ロマンの美学が随所に宿っています。部屋ごとに天井の造りや床の間、釘隠しの装飾が異なり、当時の職人技術の粋を結集したディテールを間近で観察できます。
主屋の南側に広がる崖線の地形を活かした回遊式庭園は、もう一つの大きな見どころです。武蔵野台地の急斜面を利用し、景石、飛び石、石灯籠が巧みに配置されています。高低差のある園路を歩きながら木々の間を抜けると、大都市渋谷にいることを完全に忘れさせる豊かな自然の息吹が五感を包み込みます。
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