首を刎ねられた鬼は消滅する。この千年の掟すら、猗窩座の強さへの狂気は乗り越えようとしました。首を失った胴体が筋繊維を編み直し、異形の頭部を再生させようとした異常事態。炭治郎は刀を手放し力尽き、義勇も満身創痍という極限下で、鬼殺隊の敗北は決定的に思われました。
その暴走を押しとどめたのは、刃ではなく過去の記憶でした。人間であった頃の名は「狛治(はくじ)」。病弱な父のために盗みを働き、罪人の刺青を入れられ、やがて出会った恩師・慶蔵と、その娘であり許嫁となった恋雪。隣の剣術道場による井戸への毒殺という卑劣な手段で最愛の人々を一度に奪われた狛治は、深い絶望の中で鬼舞辻無惨と遭遇し、人間としての記憶をすべて奪われたまま鬼の修羅道を歩まされていました。
炭治郎の放った「もうやめろ」という魂の叫び、そして脳裏に現れた恋雪の幻影が、狛治の凍りついた心を融かします。「狛治さん、もういいの。思い出して」。自らが本当に殺したかったのは弱者ではなく、大切な人々を守れなかった自分自身の無力さだったと気づいた彼は、自らの肉体に向けて最後の一撃を放ち、再生を拒んで笑みを浮かべながら消滅していきました。
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