北海道の東端、根室半島の先端に位置する納沙布岬に立つと、見渡す水平線のすぐそこに人工の構造物が確認できます。歯舞群島に属する「貝殻島(かいがらじま)」に建てられた白亜の灯台です。納沙布岬から貝殻島までの直線距離計測は、わずか3.7km。天候の良い日には双眼鏡を使うまでもなく、波間にそびえる灯台の姿が肉眼でくっきりと浮き彫りになります。
この距離感は、東京駅から皇居を挟んで新宿駅に至る距離よりもはるかに短く、徒歩でも1時間足らずで到達できるスケールです。しかし、そこには決して自由に越えることのできない分厚い国境線が横たわっています。貝殻島を含む北方四島は第二次世界大戦末期に旧ソビエト連邦によって占領され、現在もロシア連邦による実効支配が続いています。
日本政府の公式見解において、北方領土は「日本固有の領土」であり、ロシアとの正式な国境線は択捉島と得撫島(ウルップ島)の間にあると規定されています。法的な領土主権の立場に立てば、貝殻島は「外国」ではなく「不法占拠されている日本領土」です。しかし、現実の統治権や海上保安庁巡視船の警備ラインという実効的観点から見れば、日本人が立ち入ることのできない「最も近いロシアの支配領域」が、まさにこの3.7kmの至近距離に存在しています。
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