映像アーカイブや実際の劇場の舞台で、世界中のリスナーを圧倒してきた現代最高峰の歌姫たちを整理します。
筆頭に挙げられるのが、ドイツ出身のダイアナ・ダムラウです。2003年のロイヤル・オペラ・ハウス公演で見せた彼女の歌唱は、今やYouTubeで数千万回以上再生される伝説のクリップとなっています。ダムラウの特異性は、完璧なハイFのピッチを維持しながら、愛娘パミーナにナイフを握らせてザラストロの暗殺を命じる「狂気と憎悪」を眼球の動き一つにまで宿らせた演劇的迫力にあります。
一方で、東洋人離れしたハイコロラトゥーラの響きで国際的な注目を集めるのが田中彩子です。10代でウィーンに渡り、22歳という異例の若さでスイスのベルン州立歌劇場にて『フィガロの結婚』のバルバリーナ役でデビュー。その後、オーストリアのブルゲンラント州立劇場で日本人最年少の夜の女王役を務めました。田中彩子の特徴は、力みや濁りを一切感じさせない、クリスタルのように透明で軽やかな超高音です。無理な喉の緊張を排した精緻な発声により、難関のハイFをまるで息を吸うかのような自然さで紡ぎ出します。
さらに、ルーマニア出身のエレナ・モシュクや、フランスの至宝サビーヌ・ドゥヴィエル、そしてアメリカのキャスリン・ルイックなど、澄み切った美声と驚異的な技巧を兼ね備えた名手たちが、この難役に新たな生命を吹き込み続けています。
Tags: