たまり醤油の真価は、食材に塗って火を入れたときに発揮されます。北海道の「セコマ 札幌黒醤油ラーメン」がたまり醤油の旨味と焦がしニンニクで中毒的な人気を博したように、強火に耐えうる香気成分の分厚さは他の醤油の追随を許しません。
濃口醤油は熱を加えすぎると焦げ臭が立ちやすく、香りが揮発して塩辛さだけが舌に残る傾向があります。しかし、たまり醤油はアミノ酸濃度が高いため、加熱によってタンパク質と糖が結びつく「アミノカルボニル反応(メイラード反応)」が爆発的に進行します。これが、鰻の蒲焼きや焼き鳥のタレにおいて、幾重にも塗り重ねても苦味にならず、艶やかな赤黒い光沢とキャラメル香に昇華する理由です。
家庭で魚の照り焼きを作る際は、最初からたまり醤油(または煮詰めた代用ダレ)を入れて煮るのではなく、仕上げの30秒前に投入してフライパンを煽るのがプロの鉄則です。フライパンの縁で醤油がフツフツと泡立ち、微小な煙が立ち上る瞬間に食材へ絡めることで、家庭のガスコンロでも専門店の焼き上がりが完成します。
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