二人の関係性を語る上で、虎番記者たちの間で今も語り草となっているエピソードがある。移籍やファームでの調整を経て初めてバッテリーを組んだ直後、人見知りで知られる髙橋が伏見を指して発した言葉は「あの、キャッチャーの人」だった。百戦錬磨のベテラン捕手に対し、名前すらスムーズに出てこない。伏見自身も後の取材で「名前を覚えてもらうまでに結構時間がかかった」と苦笑交じりに振り返っている。
連絡先すら直接交換せず、当初は首脳陣やチームメイトを介して意見をすり合わせる状態が続いた。SNSのインスタフォローが行われたのも、実戦でコンビを組み始めてから実に1か月後のことだったという。現代のプロ野球選手としては異例とも言えるぎこちないスタートだったが、グラウンド上で交わすサインの精度だけは最初から異彩を放っていた。言葉による社交辞令を省き、純粋にボールの軌道とミットの音だけで対話を進めたことが、かえって余計な先入観を排除した強固な信頼の土台となった。
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