ムタの魅力の核心にあるのは、重厚でありながらどこかユーモラスな「声」の存在感です。声を担当した佐藤允氏は、1950年代から1970年代にかけて東宝映画を中心に活躍し、岡本喜八監督の『独立愚連隊』シリーズなどで強烈な個性を放った昭和を代表する映画俳優でした。彫りの深い風貌と野性味あふれる演技から、海外のアクションスターになぞらえて「和製ジェームズ・コバーン」の異名をとった実力派です。
アニメーションのアフレコ経験は決して多くなかった佐藤氏ですが、森田宏幸監督が率いる制作陣は、単に口の悪いマスコットではなく「酸いも甘いも噛み分けた、世捨て人のような風格」を求めました。佐藤氏のドスの利いた低音ボイスは、ふてぶてしく巨体を揺らすムタのビジュアルと奇跡的な調和を生み出しました。威圧感の中に漂う茶目っ気。これこそが、子ども向けのアニメキャラクターに留まらない大人の哀愁をムタに宿らせた最大の要因です。
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