なぜ金属によって炎の色が変わるのか。その根底には、原子内の電子がたどるエネルギーの移動が存在します。金属化合物を外炎などの高温環境(およそ1,000℃〜2,000℃)に投入すると、熱エネルギーによって化合物が熱解離し、気体状態の原子が生成されます。
通常、電子は最もエネルギーが低く安定した「基底状態」の軌道に収まっています。しかし、炎の熱エネルギーを吸収すると、電子は外側の高エネルギー軌道へと跳ね上がります。この不安定な状態を「励起状態」と呼びます。
励起状態となった電子は極めて短い時間(およそ10ナノ秒程度)で再び元の安定した基底状態へと遷移します。この時、2つの軌道間に生じるエネルギー差(ΔE)が、電磁波、すなわち光子として外部に放出されます。プランクの法則(ΔE = hν = hc/λ)が示す通り、放出される光の波長(λ)は軌道間のエネルギー差に反比例します。原子核の陽子数や電子軌道の幾何学的配置は元素ごとに厳密に決まっているため、放出される光のスペクトル線も各元素固有の波長となり、人間の目には決まった色として知覚されるのです。
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